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オランダ訪問(2)日本への示唆 [スマートエイジング]

オランダのホーフヴェイグから学ぶことは3つあります。

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    ホーフヴェイグ内のスーパーマーケット

まず、シンプルにこのような場所を日本にも作ってみてはどうかなと思います。
私の個人的な印象ですが、認知症グループホームなどの中には、ここよりもより地域で「普通に暮らす」ことが実現できているところがあります。そこをこのような施設に戻す必要は全くないと思いますが、デザインや職業意識が固定化されてしまっているタイプの老人ホームなどは、根底にある思想を理解した上でこうしたデザインを取り入れリノベーションするというのは意義のあることではないかと思います。スイスやドイツなどでは実際に類似した場所を作る予定になっているそうですが、イボンヌさんが懸念していたのは、建築だけ真似て、人の教育や働き方が従来のままになってしまわないかということでした。普通の暮らしを実現するというコンセプトが重要になります。
以前取材したことがありますが、日本でも介護施設に、居酒屋コーナーを作ったり、部屋が家だということで廊下に番地表示をつけたりという取り組みがありました。残念ながら、これは非常に表層的な取り組みだと感じています。あくまで大事なのは、全体を貫く思想にあると思います。

次に、ライフスタイルという方法論です。日本では多くの場合、「普通の暮らし」は、その場所を経営する現場責任者や法人の経営者のもつ観念によって規定されています。もちろん、非常に主体性と多様性を重んじる人もいますから、自然と多様なケアの空間を作っている人もいますが、日本人の「普通の暮らし」が1つしかないということはないと思います。もちろん、一人一人に固有の暮らしがあり、固有にプランがあることは言うまでもありませんが、その上で仕組みとしてこうしたライフスタイルの考え方を取り入れていくのは意義のあることではないかと思います。(ホーフヴェイグでも、個別に生活の目標や計画はもちろんあると言っていました。)もし、日本で、地域ごとに様々な介護施設やサービスが様々なスタイルによって提供されていて、自由に選べる状況であれば、必ずしも一つの法人内でこうした多様なライススタイルに対応する必要はないかもしれません。

3つ目は、地域づくりへの示唆です。

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ディズニーランドが夢の国で、キャストの働きやモチーベーションも素晴らしいからと言って、それを浦安市全域に広げたり、日本全体へ広げたりすることは原理的に不可能です。あくまで、1つの会社がマネジメントする空間だから、ディズニーランドがディズニーランドになっているのです。それと同じように、ホーフヴェイグがよいところだからと言って、それを拡張して、認知症の人が(も)安心して暮らせる地域を作ることは無理ではないかと思います。
一方で、私が認知症フレンドシップクラブでは、地域を構成する市民やお店に対し、認知症の人への接し方などの講座を通じて、安心して暮らせる地域を作ろうとしてきました。少しずつ、地域は変わり始めているものの、人やお店を啓発するアプローチだけで、近い将来、認知症の人がどこでも安心して出歩ける地域を作ることも難しいのではないかと思います。町を構成する人々は入れ替わるし、全ての人の意識や行動を変えるのはかなりのチャレンジです。
例えば5年後と考えてみた場合、2つのアプローチの中間、あるいはこれらを組み合わせたような地域づくりができるのではないかと思います。例えば、介護施設と学校とショッピングモールを、それぞれホーフヴェイグのような場所にして、それをつなぐ交通システムを認知症の人も安心して利用できるものにする。あるいはこれらをICTでつなぎ、認知症の人が安全圏から出たらアラートが出る、そういったことが考えられるのではないかと思います。まち全体は、かならずしも認知症の人が安心できない砂漠のような場所であったとしても、安心できるオアシスのような場所とそれをつなぐ道さえあれば、最低限、「普通に暮らす」を体現できるのではないでしょうか。

昨年から国際大学と富士通研究所と進めてきた認知症のプロジェクトも、まもなく領域の探索のフェーズを終え、実際の実証実験のフェーズに入っていける手応えが出てきました。来年から、これまで深めてきた概念をより具体的な仕組みに落としこんでいく作業を始めていきたいと思います。


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