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震災からまもなく二ヶ月 思うこと [震災]

震災が起こってまもなく2カ月が経とうとしています。
最初は、身の回りの人の安否の確認から始まり、メディアから伝えられる被災地の惨状に目を奪われました。かつてのNHKの同僚たちは、福島や宮城の現場に入り被災地の現状を伝え、医療や介護などに携わる仲間の中には、真っ先に現地に入り、支援の活動を始める人も少なくありませんでした。

私は・・・というと、認知症に取り組むNPOの一員として何かしなくてはということで、認知症に関する情報をまとめた特設サイトを作ったりしましたが、正直何をしていいか分からず、今日まで来てしまったような気がします。私が医療や介護のスキルを持っている訳でもなく、多くの人が情報を活用してくれるようなプラットフォームを作れるようなポジションにいるわけでもなく、非常に歯がゆい思いです。

しかし、だからと言って、これから医師や介護福祉士になって現場に真っ先に飛び込めるように勉強をするというのではどうしようもないので、結局、現在NPOで取り組んでいる活動を通じて、震災が突き付けた問題を分析し、これからの地域づくりや医療介護の在り方に反映させていくということが私に課せられた役割なのだと思います。

現地に行っていない状況で何かを語ることの危うさは自覚しつつ、被災された現地の介護施設の方の話、認知症に関係する記事、現地支援に携わる指導的立場の方々の話などを聞いたこれまでの示唆を少しまとめておきたいと思います。

● 介護保険以降、作られつつある新たな家族・地域のカタチ

今回の震災では、介護施設に留まった職員が24時間交代でお年寄りの世話をした様子が報道されています。中には、交代の職員が出勤できないため、1か月以上も自分の家族に会えずに仕事をし続けた職員もいたそうです。これは、医療の現場にも言えることではありますが、認知症の方をケアする場合には、例えプロの職員であったとしても、他のところからやってきた職員では、その人に関する情報もなく、信頼関係が醸成されていないことからケアができないということが少なくありません。そうした状況では、職員は現場を誰かにまかせて去るということは非常に難しくなります。仕事としての、医療やケアの担い手という側面もありますが、それだけでは説明しきれない"疑似家族"的な要素もあるのではないかと思います。

阪神・淡路大震災でも、要介護者の問題は取り上げられましたが、介護保険制度が2000年に始まって以来、これだけの規模の災害が起こるのは初めてのことです。介護の社会化をうたって導入された制度が、本当に社会化ができているのかどうかという点については、様々な指摘がされていますが、少なくとも阪神・淡路大震災の時にはほとんどなかったグループホームや小規模多機能といった施設やサービスが全国に多く存在します。被災地の中には、介護施設を利用する人たち同士で、お風呂の貸し借りをしたり、ちょっとした手助けが生まれているところもあったそうです。

今回の震災は、災害時の介護施設の脆弱性を示した一方で、新しい家族的なもの、新しいコミュニティー的なものが生まれつつあることを表しているようにも思えます。介護施設や医療機関は、社会的弱者のための機能でもありますが、薄れつつある地域や家族のつながりを、再構築(もしくは新たに構築)するための核となる可能性があるのではないかと思います。

● ニーズ仲介機能や政治的チャンネルの欠如

今回、印象的だったことのひとつに、支援したいと思う人はたくさんいて、支援をしてもらいたい場所もたくさんあるのに、それが結びつかないマッチングの問題があります。介護スタッフでも、これは顕著でした。3月20日段階で、厚労省が全国の介護施設に問い合わせたところ、
5971人の職員が派遣可能とのことでしたが、実際に派遣されたのは、3月29日時点で172人、4月下旬段階でも累計で699人という数字でした。短期的には連絡がつかないなどの問題もあったかと思いますが、比較的業界団体を通じた連絡が取りやすい業界内の話なのに、ニーズの仲介機能を行政が十部果たせていないことを浮き彫りにしました。これは私自身の反省になりますが、サイトを使って認知症に関する情報のマッチングをできないかと試みてはいますが、震災直後は情報提供が寄せられたものの、現在は新規の書き込みが少なく、仲介機能を十分に果たせていません。

これは有事の時だけの問題ではなく、医療に比べ、現場や業界のニーズを十分に吸い上げるチャンネルが少ない介護の業界の現状を表しているとも言えます。介護従事者の労働環境や待遇の問題も、組織化された労働組合がなく、きちんとした政策課題として提示できないという側面があることも否めません。現在、介護保険以降に仕事を始めた30代くらいの若手によるグループがいくつか形成されつつあります。現場のニーズを仲介する機能や政治的なチャンネルに乗り、政策に反映されるような仕組みがそこから生まれてくることに期待しています。

他にもいくつかありますが、ひとまず今日はここまでにしたいと思います。





タグ:認知症 震災
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