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IVLP報告(1) ワシントン [活動日誌]

実は、今、アメリカに来ております。

米国務省の開催しているインターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)というのに参加してまます。ワシントンDC→ボストン→サンフランシスコ→ホノルルというルートで、医療・福祉の関係者と意見交換をしてくる予定で、今ボストンにいます。

普段は、「どんな医療が求められているのか?」、「地域の連携はどのように作れるのか」といった医療や福祉のあり方を、コンテンツレベルで考える仕事をしていますが、一度、日本の文脈から離れ、制度も文化も違うアメリカの実態を知る中で、産業や国というレベルで、医療や福祉がどのように位置づけられるのかを考える機会にしたいと思っております。事前の希望テーマ・訪問先に基づいて、一日に2~3のアポイントメントが入っているので、トータルで会う方は相当な数になります。すでに50枚用意してきた名刺がなくなりかけてます・・・

さて、記憶がなる前に、印象に残った話を簡単にご報告しておきたいと思います。
まずは、その1ということでワシントン編です。

根強い市場原理崇拝と”自由の国"の代償

<訪問先>米議会の歳入委員会 

オバマの医療改革の是非と課題について、民主党・共和党の政策スタッフからそれぞれ話を聞きました。
興味深かったのは、5000万人近い無保険者がいて医療が受けられない問題について、共和党スタッフは、「保険などに関する規制が多くて適切に市場が機能しないから、問題が起こる。規制を撤廃し、税金を少なくすることで、もっと多くの企業が従業員に医療保険を提供するようになるだろう」と言っていた点です。数字に基づいた実証的な議論ではなく、"市場原理崇拝"とも呼べるものだと思いますが、テレビやネットなども含めこうした考え方をもつ人が少なくないことが分かります。
また、医療保険の実際の運用は、州政府が行うことになるのですが、中央で政策を一元的に管理できない連邦制が、問題を複雑にしていることも分かりました。

高齢者問題は、世界的な課題へ アメリカの現状は・・・

<訪問先>Leading Age/IAHSA

高齢者施設の連合組織で、各国、各地域のケアに関する情報提供や政府・国際機関に関する働きかけを行っている団体。 2040年までには、歴史上初めて、世界の子ども人口よりも高齢者人口の方が多くなる社会に突中すると予想され、国連でも、子どもの対策や伝染病対策などが中心的な議題だったが、世界的な高齢化の問題に関する関心が深まっているそうです。

アメリカの高齢者の現状をみると、OECD加盟国の中でも、経済的にも、社会的も最も悲惨な状況と認識しているとのことです。アメリカでは、医療保険もそうですが、高齢者が必要なケアを受ける枠組みがありません。
高齢者向けの公的医療保険(メディケア)で、カバーされるのは、医療措置が必要な短期の場合に限られます。貧困層を除くと、通常の介護施設はすべて自己負担になります。(貧困層は、例外的に、メディケイドという公的な保険でカバーされます。)オバマ改革の中には、CLASS ACTという法律があり、ケアを受けるための基金を作ることが提唱されていますが、財源の問題から共和党から激しい反対があり、実現可能性は見えない状況のようです。

日本では、介護の質の問題が中心に議論されていますが、米国ではアクセスの問題が大きな問題となっていて、日本の方がはるかに先を行っている印象です。ケアの問題は、制度に依存する部分が大きく、国境を越えた情報交換が少ないのが現状ですが、日本の経験はアメリカに輸出できるという感触を持ちました。ケアの技術や思想だけでなく、経営や政策レベルで世界的な実態(アメリカや多くの途上国)を意識した上での発信が求めらていると思います。
http://leadingage.org/ http://www.iahsa.net/

健康関連情報サービスの可能性

<訪問先>National Business Group on Health

大企業向けに、従業員の健康プログラムや地域別、疾病別の情報提供をしている非営利団体です。日本では、企業の健康保険組合がやっていることですが、こちらにはそもそも健保がないので、その機能だけを取り出し、複数企業をまとめて効率化しているサービスです。
健康関連情報のサービスというと、BtoC(消費者に対するサービス)を想起していましたが、日本でも、企業の健保組合が解散したり、機能をアウトソーシングするようになっており、BtoB(企業に対するサービス)というモデルもいけるかもしれないと感じました。
http://www.businessgrouphealth.org/

アメリカには、この他にも、日本にはない健康関連の事業を行っている会社やNPOがあります。
明日訪問する予定のPatientslikemeも、その1つで、非常に楽しみです!
(報告は、のちほど、ボストン編にて)

***

アメリカの医療関連の情報は、在米経験のある医師や製薬会社によってもたらされることが多く、医療技術の高さや優れた取り組みが強調されますが、国全体で見た場合の医療制度や介護制度にはかなり大きな問題があります。医療制度については、米国から何かを学ぶというよりは、日本と比較する中で、日本のいい部分について客観的に再認識できるという感じではないかなと思っています。
一般的に、日本はアメリカの取り組みを、思想をぬきにして、形だけの部分的な輸入をすることが少なくありませんが、医療関連の分野に関してはアメリカの部分的な模倣は避けねばならないと思います。
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