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IVLP報告(2) ボストン [活動日誌]

IVLPの報告、ボストン編です。
ITは、すごく進んでいるなーというのが率直な印象です。

IT×Health×起業家精神 アメリカの底力はここにあり!

<訪問先>PaitentsLikeMe

今回の訪問先の中で、最も楽しみにしていた訪問先のひとつが、医療や健康に情報を共有するサイトをつくっているPaitentsLikeMeです。
患者が自分の治療や薬、生活に関するデータを入力し、公開のデータベースをつくっている会社で、病気の種類や症状、年齢などから検索すると自分に近い状況の人のデータを探しだすことができます。現在アメリカ国内を中心に世界で11万人が登録し、500以上の症状についての情報が登録されています。(もっと詳しい情報は、TOBYOなどにも紹介されています。)

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日本でも、ブログなどで闘病記を書く人は多いのですが、PaitentsLikeMeの特徴は、統一されたフォーマットで、数字やグラフにしている点です。ある病気になった人が、このサイトを利用すると、自分が今後どのような変遷をたどるのか、経過を予想することができるようになります。特に難病などでは、同じ病気の人と出会うことが難しく、このサイトを通じて地域や国境を超えて、お互いに勇気づけることが可能になります。ITを使った非常にアメリカらしい取り組みで、さらなる発展の可能性を感じました。

創設者のひとりの家族が難病になったことをきっかけに、2004年に設立され、現在50人ほどの社員が働いています。小さなビルを改装したオフィスには、壁一面にホワイトボードがあって、様々なアイデアが書き込まれていたりして、なかなかクリエイティブで働きやすそうな職場でした。形態としては、営利企業に分類されるそうですが、IPOなども特に考えていないということで、「世の中に役立つことをやりたいからやっている」というスタンスを感じました。日本で言う、「社会起業家」に位置付けられるかもしれません。

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共同創設者のひとり Jemes Heywoodさん(右から2人目)と一緒に

匿名文化が強い日本で、どのくらいの人が、自分の病気やデータを公開したいと考えるかは若干疑問がありますが、医療や介護に関する情報をITで集約し、患者などの生活向上に役立てていくというアプローチは、日本でも非常に強く求められることではないかと思います。Googleは、世界中に散らばった言語や画像化された情報を集約し、検索できるようにしましたが、医療や介護に関する情報は、言語化されずに埋もれている割合が高いように思います。埋もれたものを言語化していく作業は、別の作業が必要ですが、IT+Xという組み合わせ、医療や介護の世界を変えていけるのではないか・・・そんな可能性を感じました。アメリカがかなり先行していますが、ぜひ、日本発で何か仕掛けていきたいと思います。

進むアメリカ医療のIT化 

<訪問先>ハーバード大学・メディカルスクール ジョン・ハラムカ教授/チーフインフォーメーションオフィサー

日本では、遅々として進まない医療のIT化ですが、アメリカでは、急速に広がりつつあります。今回訪問したボストンのあるマサチューセッツ州は、全米でも最先端の地域です。全米の医療のIT化を進める会議の議長でもあるジョン・ハラムカ教授に話を伺いました。

驚いたのが、マサチューセッツ州の病院グループ(全てではないそうですが)では、患者が医療情報をインターネットからアクセスできるようになっているということです。薬の種類や治療歴、診断画像などはもちろんのこと、担当医師のシフトまで見ることができます。転院する時などは、このデータを移動することができ、MRIやCTなどを病院ごとにとるといった無駄を省き、一貫した治療をすることが可能になります。日本では、医師が入力する時間がない・・・などの課題が指摘されますが、ここの病院では、データセンターに医師が電話をして、治療記録を音声で伝えると、自動的にテキスト化され、それを最終的に医師が確認し、署名をするというシステムもあるようです。膨大な紙を管理する日本の病院の現状から考えると、信じられないIT化です。

アメリカは、2005年のハリケーン・カトリーナをきっかけに、医療のIT化が推進されるようになり、270億ドルが投じられています。アメリカでは、一度入院しただけでも、病院や保険会社だけでなく、レントゲンや薬剤師、ソーシャルワーカーなど、複数の請求書が送られてくるといったことが少なくないようです。増加する医療費を抑えるため、国策として巨費を投じてIT化を進めていることが分かりました。

日本では、カルテの電子化などは進めている病院もありますが、病院グループを超えて共有されることはなく、投資する割に、電子化する社会的なメリットがありません。無駄を減らすという点からもそうですが、それだけでなく、IT化は、医療データを蓄積し、より効率的な資源配分や有効な治療につなげていくという意味でも重要です。この分野に関しては、国の強力なリーダーシップが必要になるように思います。

リハビリ先進国アメリカ 介護後進国アメリカ

<訪問先>スポルディング病院

急性期、回復期、療養型、介護施設という一連のつながりと連携を知りたいということで、ボストン市内の大きな病院グループを訪問しました。日本と比べたアメリカの病院の大きな特徴は、病院への入院期間が非常に短いことです。日本の一般病床の平均は19日ですが、この病院(急性期病院ですが・・・)では平均在院日数は、3日。(全米の平均は6日)急性期病院では、手術後初日からリハビリプログラムが開始され、可能な限り早くリハビリ病院へ移ります。リハビリ病院では、一日3時間以上のリハビリが行われ、様々なプログラムが時間割のように組まれています。日本では、急性期の病院に長く入院するため、リハビリ開始が遅くなり、機能回復が遅くなることが問題視されています。1つ1つのプログラムの質もさることながら、病院間の生態系という意味で、リハビリ先進国アメリカの一面を実感しました。(あくまで、これは同じグループ内の話で、保険の問題から、転院できる先がなかったり、限られたりするというアクセスの問題は別にあります。)

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リハビリ病棟のスケジュール表 患者ごとに1日3時間以上 様々なプログラムが用意されています

その一方で、このグループの介護施設も見せてもらったのですが、介護には非常に大きな課題を感じました。訪ねたのは、140人が入居する介護施設で、多くが、ある程度医療的な措置も必要な人たちで、特に入居期間に制限はないところだそうです。(日本でいうと、老人保健施設と有料老人ホームの中間くらいでしょうか。)お邪魔したのは、昼時でしたが、まず施設に入ると、臭いが結構しました。
日本でもそういう施設はまだありますが、よっぽどひどいところでない限り臭いの問題は改善されています。エレベーター前には、お年寄りが椅子に座らされて、別の階に移動するのを待っていて、ケアが流れ作業で行われている印象でした。認知症の方もある程度いるようですが、特に認知症ケアで気をつけている点や認知症の人向けのプログラムはないということで、ケアスタッフや看護師が個々に対処しているようです。もちろん、この施設だけから判断はできませんが、複数の人のインタビューなどからも、アメリカの平均的な介護施設のケアの質は低いという印象を持ちました。
アメリカでは、介護施設を利用する場合、貧困層か医療措置が必要な場合を除いて、自己負担になります。日本のように、誰しもが介護施設を利用するという意識はなく、どちらかというとかわいそうな人が行く場所という感覚のようです。オバマのヘルスケア改革の中には、ベビーブーマーの医療費を抑えるため、医療ニーズの低い人を中心に、介護サービスの利用を推進する法律も含まれており、今後状況は変わってくるかもしれません。
過去には、ドイツの介護施設なども取材したことがありますが、日本のケアの平均的なレベルは世界的に低くありません。確かに、北欧やデンマークのようなノーマライゼーションのような基本的な思想が欠如していたり、ケアの経験が蓄積せずに質の低いケアがなされている施設が少なくないことも事実です。しかし、自らの介護経験などをきっかけにNPOや社会福祉法人を立ち上げ、小規模できめ細かいケアを実践しているところが全国に無数にあることも事実です。アメリカや発展途上国などに、日本の経験を輸出すること十分できるように思います。現段階では、ビジネススキームをパッと思いつくことはできませんが、ケアの経験の輸出を真剣に考えてもよいのではないかと思います。



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