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これはおかしい!認知症の人は入院できないのか? [専門医療]

昨日、ある地域の知人から聞いた話です。

デイサービスを利用しながら、地域でのボランティア活動などに精を出されている若年認知症の男性が、急性肺炎になって、救急車を呼んだところ、複数の病院から認知症を理由に受診を断られてしまったとのこと。ようやく見つかった病院に入院することになったが、ベッドで身体拘束をされてしまい、様子が激変してしまったとのことです。

家族やケアスタッフが長い時間をかけ、その方のニーズを汲み取りながら、その方の望む暮らしを実現してきていたのに、こうした体の病気で、認知症への対応する環境が整っていない病院に入院することで全てが台無しになってしまうことには憤りを感じざるを得ません。

このブログでは、認知症の医療について紹介してきましたが、それらは、主に精神科や神経内科で、体の病気(特に急性期)を診ることは難しいのが現状です。一般の内科で入院する際に、病院側が警戒するのは、認知症がある人は、大声を出して周囲の人に迷惑をかけたり、点滴を抜いてしまって治療ができなかったりということです。きちんとした体制が整っていれば、これらは未然に防ぐことが可能ですが、残念ながら一般の病院ではこうしたトレーニングを受けたスタッフは皆無です。

つまり、認知症の方が、体の病気になってしまった場合、入院できる施設は非常に少ないのです。そして、なんとか入院をできたとしても、上記のように、不適切な対応をされてしまう可能性があるのです。別のエントリーでは、「認知症を理由に入院させない」という信念の医師を紹介しましたが、認知症ではなく、体の病気の場合、入院は他の人と同じように、不可欠のことです。認知症の人が、入院できない現状は、早急に改善する必要があると思います。

以前、妊婦の救急搬送が問題にされたように、この問題も緊急性と重要性を持っていると思います。まずは、問題の所在の明確化と、地域の医療機関に関する情報の整備、そして、これは少し時間がかかりますが、医療体制の改善を働きかけていきたいと思います。
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「認知症では絶対入院させない!」情熱的に取り組む医師  [専門医療]

金曜日は、横浜の金沢区
土日は、千葉の成田
月曜日は、岐阜の恵那市

出張3連続で、さすがに疲れましたが、各地の医師や介護スタッフの
みなさんと地域連携について話し合いや研修をして、パワーと活動のヒントをいただきました。

なかでも感銘を受けたのは、千葉県で精神科の訪問診療をしている上野秀樹医師です。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110113/bdy11011300490002-n1.htm

上野医師は、「認知症で絶対に入院させない」を信条に、診療をされているそうです。
もちろん体の病気で入院が必要になるときはありますが、認知症のBPSD(認知症にともなう暴力や興奮などの症状)を理由に入院をすると、より症状は激しくなる→抑える薬が増えるという循環を繰り返し、最後には亡くなることが多く、家や施設にいる方を地域で暮らしていけるよう支えていくのが医師の役割だというお考えです。
認知症の人やご家族には、ご自分の携帯電話を教えているということで、そのあたりからも真摯な姿勢がうかがえます。

普通、「精神科病院にやむなく入院が必要な場合もある」とか「ケースバイケース」といった言い方になるわけですが、そうした説明を言い訳に、家や施設で手に負えなくなったので入院ということがごく普通に行われています。そうした現実に、はっきり否と言い、実際の診療でそれを実践されている上野医師は、本当の意味での認知症の専門医(=認知症の人と家族の暮らしを支える専門家)と言えると思います。

全国的に、こうした医師の数は非常に少ないですが、実際に信念を持って活動されている方がいることに勇気づけられました。


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認知症の専門医はどこに?(3) [専門医療]

前回のエントリーで、「専門医」という考え方の落とし穴について、述べました。

外科などでは、「あの医師しか治せない」といったカリスマ性に光があたることがありますが、認知症の場合まったく状況が異なります。

大学病院は、認知症の人を専ら診ている医師がいて、検査設備も充実していて、鑑別診断は得意です。しかし、大学病院は、その人の住む地域から遠い場合が多く、地元の介護事業者や行政などとの情報共有はほとんどできません。普段の生活の状況が分からずに、長い期間、大学病院だけを受診することはお勧めできません。
一方で、地域の医師には、経験や考え方にばらつきがあり、適切なところを見つけるのが難しいのが現状ですが、訪問診療などに希望の光があるという話でした。

しかし、「そんなクリニック、探してもないよ」「概況は分かったけれど、現状で何かよい手立てはないのか?」という意見をいただきます。そこで、今回は、医療の現状ではなく、厳しい現実の中でどのような作戦で医療と向き合っていくのかという実践論を紹介したいと思います。以下は、多くの医療関係者や認知症の本人・家族から聞いた話をもとに考えた原則ですが、あくまで個人的意見ですので、その点はあらかじめご容赦ください。

(1)認知症なのか知りたい場合

特に認知症の初期では、近所の精神科クリニックなどに行くと、うつ病と診断されることも少なくありません。病院で違う病気と診断されたが、どうも薬も効いていないようだし、様子がおかしい・・・もしかすると認知症では?という場合には、
一度臨床経験の豊富な「専門医」を受診すること をお勧めします。

認知症の診断には、問診、神経心理検査、画像検査などをもとに行われますが、認知症なのかどうか、どのタイプのものなのか、調べれば必ず分かるというものではありません。しかし、経験の豊富な専門医は、一般の医師に比べて、認知症の方を何十倍、何百倍も診ています。例え、画像検査などではっきり分からなくても、ご本人の話しぶりや生活の様子から、他の病気かどうか、どのタイプの認知症なのか、かなりの程度察しがつくというのは事実だと思います。

ただし、大学病院や精神科病院は、地域のかかりつけ医や体の病気を診る科目の医師と、ほとんどつながりがありません。都内で認知症の方を多く診ていたある専門医も、「認知症の方をなるべく地域の医療機関に帰していきたいが、どこに紹介すればいいか分からない」と仰っていました。鑑別診断の後、どうすればいいのかを、自力で解決しなくてはいけない場合が少ないことを注意する必要があります。

(2)認知症にともなう症状ですでにかなり困っている場合

認知症であることは、医師や家族ともに、あまり疑問の余地がなく、すでに症状で困っているという場合は、地域で医療機関を探すことになります。

この時の大事なのは、
認知症の方に日頃から接している介護事業者から評判のよい医療機関を聞き出すこと
です。介護事業者は、医療の質について評価する立場にはありませんが、介護スタッフからの生活情報に耳を傾けているかどうかなどを必ず評価しています。あの医師は、信頼できる人だと、認知症の方をきちんと見ているというのは、地域の介護スタッフの間では半ば公然の秘密です。

では、どうやって介護事業者の考えを聞くことができるのか?
いきなり事業者に電話をかけても教えてくれませんし、立場上、そういう情報を触れて回る人はあまりいません。
信頼おけるクリニックを知るためのよい方法は、認知症ケアに熱心に取り組む介護事業者が、どの医療機関と提携しているか(施設で言えば、契約している訪問診療医など)、地域での会を開く際にどの医師を呼んでいるのかなどを調べることです。ネットの公開情報などからもかなりのことが分かります。介護事業者との連携の会議に呼ばれている医師は、理解が高い証となります。

認知症に熱心に取り組む介護事業者は、医療機関と違って、自分の目や耳で確かめることが可能です。施設やサービスの見学をすることもできますし、小規模な事業者ならば代表者に直接話を聞いてもいいと思います。ちなみに、一般的には、大手よりは、介護体験を経て、事業所を立ち上げたようなところの方が熱心です。
面倒くさいようですが、不適切な医療機関をたらい回しにされないためには、こうしたステップを踏むことが必要になります。

他にもいろんな場合が想定されますが、今回はひとまず代表的なケース2つを紹介しました。今後もこうした実践論をご紹介したいと思いますが、こうしたテーマに関しては、多様な経験をお持ちの方がいらっしゃることと思いますので、ご意見や体験談などある方はコメントお願いします。


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認知症の専門医はどこに (2) [専門医療]

このブログを見ていただく中で、最近特にアクセスが多いのが、
「認知症の専門医はどこに?」の記事。

親や配偶者が認知症かもしれない・・・ということで、
どこの病院に行けばいいのか、必死で情報収集される方が多いのではないかと思います。現在NPOをやっているのも、まさにこうしたニーズに事業や相談サービスとして、応えたいということからなのですが、残念ながら事業としてこうした声に応えることはできていません。しかし、事業化まで待つことができない方も少なくないので、このブログを通じてこれまで得られた知見やコツを整理して、お伝えしていこうと思います。

前回のエントリーで紹介したのは、医療機関を検索するサイトでした。

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日本老年精神医学会     とうきょう認知症ナビ

これは、まず調べるとっかかりとしては、役立つサイトです。

しかし、ここで注意しなくてはいけないのが、認知症を診る医師には、様々な種類があり、
ここに掲載されているからと言って、今困っている状況に適した医師とは限らないのです。

例えば、診療科で言えば、精神科、神経内科、脳神経外科、それから一般の内科などがあります。
また、国が進めている体制では、日頃の診療をしながら認知症の人も診る「かかりつけ医」、地域のかかりつけ医を指導する立場にある「サポート医」、そして、認知症を扱う学会が認定した「専門医」がいます。

日本老年精神医学会のサイトに掲載されているのは、主に、精神科の専門医です。
とうきょう認知症ナビは、東京の「かかりつけ医」と「サポート医」を掲載しています。

かかりつけ医は玉石混交
認知症に対応できる医師として掲載されている人の中には、必ずしも知識や診療経験が十分でない人も少なくありません。例えば、「かかりつけ医」として掲載されている医師は、かかりつけ医認知症対応力向上研修という1日の研修を受講しただけですので、その中には日頃熱心に認知症の人を見ながら勉強している内科医もいれば、医師会のつきあいで受講しただけでほとんど知らない医師も含まれます。

サポート医≠専門医
ならば、かかりつけ医を指導する立場にある「サポート医」というのが、安心かというと、これも落とし穴があります。「認知症サポート医養成研修」というのを受けていれば、専門でなくてもなれてしまうのです。そもそも認知症を専門とする医師が県に数人しかいないということもあり、そのフォローができる人ということで、地域の顔役の医師がサポート医を引き受けている地区もあります。

専門医は安心できるのか
ということは、最後は専門医に頼るしかないのか、ということになりますが、それも必ずしも最適なのかは分かりません。というのも、認知症の専門医と呼ばれる医師の数は少なく、受診を希望する人が多いため、予約が数ヶ月待ちということもあります。また、遠方の大学病院で頻繁に通えないため、日々の生活の様子のモニタリングができず、適切とは言えない治療方針が続くことも少なくありません。認知症かどうかの診断に、専門病院に行くことは必要かもしれませんが、その後、かかりつけのクリニックとの連携なしに大学病院などに通うことがあまりよい結果をもたらさないことも多いのです。

ではどうすればいいの?
認知症は薬を飲むと、すっかり元通りになるという病気ではありません。そのため、長年医療ではなく、介護の領域として考えられていて、医師が果たす役割が軽視されてきました。そのため、認知症のことをきちんと理解し、介護や家族と連携しながら生活を支えるという視点を持った医師の数が絶対的に不足しています。その意味で、認知症を診れる医師の数が少なく、地域内にそうした医師がいない地域というも多くあると思います。上記のサイトの地域の医師のリストを参考に、ホームページや診療でのやりとりなどをもとに、認知症への理解や経験について判断するしかないのが現状です。

希望の光は・・・
ただ、最近の希望の光がひとつ見えてきています。
地域で訪問診療に積極的に取り組む医師が増えてきました。認知症の専門とされる精神科の医師でなくても、日々、認知症の方と接しながら、勉強を続け、生活を支える医療を実践する医師が増えてきました。私も、ここ数年、各地でこうした方たちにお会いする機会が増えてきたように思います。体の健康診断などとともに、こうした方に家に来てもらうことは、ファーストチョイスとして考えていいのではないかと思います。







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他職種チームの重要性 [専門医療]

今月、関わっているNPOの会合で、
他職種がチームで本人家族を支えることの
重要性を感じるエピソードを聞ききました。
http://www.dsbridge.or.jp/

認知症の方が入院するときに、
日頃から付き合いのあるケアマネが付き添い、
「ご本人は耳が遠いけど、筆談ならばコミュニケーション可能」
と医療スタッフに申し伝えることで、大きな問題なく病院生活を
送ることができたそうです。

ささいなことに思えますが、もしこの情報がなかったら、
望まない治療や看護を受け、ひどく混乱されてしまうなど、
治療やその後の状態によくない影響を与えたかもしれないのです。

逆に、治療の経過が介護スタッフに知らされていないことで、
副作用など重大な兆候を見逃してしまうというケースもあると思います。
本人家族を中心に、他職種が情報共有をする仕組みが必要なのです。
専門的医療というのは、専門医が診るということでもありますが、
こうしたチームによる医療介護サービスを受けることではないかと思います。



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認知症の専門医はどこに? [専門医療]

認知症が疑われる時に、専門医に診てもらい場合、一体どこに行ったらよいのでしょうか?

(1)まず、取っ掛かりになるのが、以下のサイトです。

■ 日本老年精神医学会
http://www.rounen.org/
「高齢者のこころの病と認知症に関する専門医」(550名)
「こころと認知症を診断できる病院&施設」(303箇所)
都道府県、市町村ごとに検索することが可能です。

■ 日本認知症学会
http://dementia.prit.go.jp/index.html
学会認定医(47名)

注意したいのは、いずれも「学会認定医」と呼ばれるもので、
学会に一定期間属し、試験や論文などで基準を満たした医師
のリストということです。

例えば、日本老年精神医学会の場合は、名前の通り、
老年精神医学の専門家ということですので、高齢者のうつや
パーキンソン病の方が詳しいという医師もいます。
認知症学会の方は、その意味では心配ありませんが、
去年から始めたために人数が少ないのが難点です。

(2)その上で、別のサイトで、認知症を専門にしているかチェック

あくまで、医療機関や医師を探す際の、取っ掛かりにして、
医師や機関のサイトにアクセスし、認知症を中心的に診ているか
チェックすることをおすすめします。

(3)専門医の利用の仕方
誰しも、専門能力の高い人や医療機関にかかりたいと思います。
そのため、ランキング本や口コミを頼りに、大学病院などに行きがちです。
しかし、200万人いる認知症患者に対し、専門医は多く見積もっても数百人です。
普段は、ものわすれ外来やメンタルクリニックなどを受診し、診断や治療方針など節目節目で専門医を受診することをおすすめします。クリニックなどの受診の仕方は、また別の機会に紹介したいと思います。



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